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各位

(4/03)

もし、以下の文章がお役に立つようでしたら、コピー、公布、ウェブサイトへの掲示、イベントでの配布等、ご自由にご利用ください。インターネットへの掲示の場合は、URLをお知らせください。また、現在、これ以外のコラムも各国語への翻訳作業を進めています。もしご協力いただける方がおられましたら大歓迎です。ラジオトークの収録へのリンクも近日中にご利用いただけます。もしご関心がおありでしたらご連絡ください。

平和を祈念して、

ダニー

地獄へと続く道

なんとも憂鬱な時勢である。先日、友人と一緒に、コスタ・ガブラスの映画「アーメン」を観た。舞台は第二次世界大戦中のドイツ、悪名高いナチ親衛隊に属する将校と、イエズス会の神父が、収容所でのユダヤ人らの虐殺をくい止めるよう、バチカン、連合国、そしてドイツ人たちに働きかけるという話である

私はアメリカの一市民として、この映画と現在の状況とを比較してみずにはいられなかった。今、何百万人ものアメリカ人が全力をつくして、この違法な戦争の恐ろしさを、残りのアメリカ人たちに伝えようとしている。イラク人の犠牲者のためだけではなく、この戦争が将来私たち、そして全世界に及ぼしかねない悪影響について、訴えかけているのだ。

中東特派員ロバート・フィスクが、戦争反対派と賛成派に「会話を交わす」よう、うながす文章を、最近発表した。私はフィスクの業績は大変尊敬しているが、まるでコーヒーカップ片手の静かなものわかりの良い会話を薦めるような論調にはがっかりした。世界中でそうであるように、私たちも、真実を知りたがらない人々との論理的な議論は、とっくにあきらめてしまったからだ。さらに世界中で、同じ考え方を持つ人々としか「会話」しない、という惰性ができ上がりつつある。

以下に、アルゼンチンの友人からの手紙と私の返事をご紹介する。希望を失った世界の視点から、地獄へと続く道を止まることなく、ひたすら進み続ける人々に対する疑問である。

アルゼンチンからの手紙

ニー、教えてください。アメリカ人は本当に、イラクで何が起こっているのか、また、その本当の理由を知っているのですか?アメリカ人は、合衆国の人口が世界の6%にしか過ぎないことを自覚しているのですか?

また、大統領選挙の参加率はやっと30%に届いたところです。ということは、世界の人口の6%のさらに30%にすぎない人々が、この狂人、独占企業の操り人形、もしこれが続けばユダヤ人のホロコーストのようにもなりかねない大量虐殺の首謀人、つまり、第2のヒットラーを、選んだのだということを、アメリカ人は認識しているのでしょうか?

アメリカ人は、この戦争の違法性と、その結果、世界中で広がっている激しい反アメリカ感情が、アメリカ人やアメリカ経済に、望まない結果をもたらす可能性に気づいていますか?

私の国では、一種の経済制裁としてアメリカ製品をボイコットしようと、人々が本気で語り合っています。昨日、家族とのランチでは、多分アメリカ人はこういったことをすべて知っているけれど、気にしていないんだろうとか、または、アメリカ人にとっては、ただ単純に、経済の恩恵と快適な生活のほうが、その犠牲となっている人々の流した血よりも重要なんだろう、といった議論が出ました。

ダニー、厳しい口調でごめんなさい。でも、私の国は、今までいく度も、メネム大統領など現地の裏切り者を通して、アメリカ政府の政策の犠牲となり、ひどい惨状を経験しました。

しかし、市民なしの政府はありえません。私は知りたいのです。私たちのような世界で抑圧されている人々が、いつか、アメリカ人が良心に目覚め、政治家の不合理な欲深さを抑制する責任が彼ら自身にあることを理解する、そういった日が来るのだと、信じることができるのかどうか。そうでなければ、世界に希望はありません。地球の将来も危うくなります。いったい、世界規模の理解や連帯感が、いつか、冷蔵庫や、フットボールの試合や、新車、豪華な家よりも大切になる日が来るのでしょうか?アメリカ人は、こんなこと考えもしないのでしょうか?教えてください。心から誠意を表して、インディアナ

アメリカからの返信

ンディアナ、私の国の人々の深い無知について、私には反論することも、また、はっきりと弁明することもできません。あなたの言ったことはすべて当たっています。あなたの質問に対しては、たとえ矛盾しているように見えたとしても、答えは全てイエスです。今の状況はとても複雑で混乱していて、ひとつの方程式にあてはめて説明することは不可能です。現在、多数の悪が結集している、この歴史的な瞬間にいたるまで、実に50年かかっているのです。

あなたの言う30%という数字については、現状はもっと深刻です。過去には、いわゆる民主主義者たちは、当選した候補者が少なくとも「大半」の票を得た、と自慢することができました。もちろんこれは、あなたの言うように、あまり正確ではないでしょうが、それでも、「当選者」が実は当選していなかったというより、ずっとましなのです。

こうして「選ばれた」政府の傲慢さや皮肉さを誇張しすぎることはできません。これに、独自の偏見に凝り固まった右翼軍事政権の狂気(正直いって、他に言葉が見つかりません)、その狂気で複雑化された宗教原理主義、そして、それを支える狂信的なリクード党派の影響力を足して混ぜ合わせれば、強力な破壊のレシピができあがります。

それだけではありません。過去20年のマスコミの統合と、右翼の政治権力と連携した企業による支配も、この歴史的瞬間を作り出す一因となっています。完全に消費のみに頼った経済は、他のどの要因よりも人々の知能を下げてしまいました。もちろん、だからといって、罪深い「自発的な愚かさ」については、同情の余地もありません。統計によれば、アメリカの70%以上の家庭でインターネットにアクセスできます。ですから、アメリカ人の無知は、意図的なものだと結論付けることができますが、さらに、これは、政治的に隔離された現状と、分析や判断を軽んじる文化によって、より複雑になっています。人々は、単に、「どう考えていいのかわからない」のです。

インディアナ、それでも、私たち何百万人もの仲間たちが、努力と苦労を重ねて、残りのアメリカ人たちに真実を伝えようとしていることを忘れないで下さい。海外の友人(最近は私の友人のほとんどが海外の友人ですが)との交流を続けることは、私にとって、言葉にならない恥ずかしさに直面することを意味します。1990年にニカラグアで一人のパナマ人に出会ったときのことが忘れられません。彼は私と同類のサンダリスタ(サンダルを履いた運動家)で、この出会いをとても幸運に思ったものですが、その年はちょうど1989年に米軍がパナマに「外科手術的攻撃」をしかけ、虐殺を行った直後だったため、大変気まずい思いもしました。今日の戦争の最中でも、ほとんどのアメリカ人が、コロンビアでの悪化する戦争のことを知りません。

第二次大戦時のドイツとの比較は適切ですが、ただ現状はもっと恐ろしいのです。少なくとも、国家権力としてのナチズムは戦争で破壊されました。ドイツ国家主義の敗北は(そのたった一例で「国家主義」を定義づけてしまいましたが)、あの戦争のもっとも重要な成果だったと言えるでしょう。このドイツの敗北にくらべ、現在、アメリカを同様に裁こうとするだけの勢力を持つものはいません。さらに、戦争犯罪者を裁く裁判も、開かれそうにありません。ベルギーでさえ、自国の法律を変えてまで、アメリカに取り入ろうとしています。

最近、コスタ・ガブラスの「アーメン」という映画を観ました。衝撃的な映画でした。アメリカ人全員が見るべきだと思います。単にストーリーの深刻さだけではなく、現状との不気味な類似から、良心の痛みや圧倒的な怒りと悲しみを感じ、多くの人が泣いて感動するでしょう。(私の妻も、原則的にはアメリカ人ではなくアフリカ人ですが、涙していました。)でも、正直言って、私には、いつ、あの人たちを目覚めさせることができるのか、またそれが可能なのかも分かりません。

しかし、長期的には、皮肉なようですが以前よりももっと強く、ある種の不気味な希望を抱いています。私は今までの成人としての人生を、民間や政治の活動にささげてきました。いつも、この運動がいつか私たちの孫の世代に利益をもたらすと信じていましたが、同時に、私の生きている間に原則的な変革は起こらないだろうと思っていました。でも、今回の危機はあまりにも衝撃的だったため、逆に、私自身にもっと希望を持つことを許す気になりました。

急速な裁きはない、という見解を示したばかりですが、この戦争は、世界の独占権力としてのアメリカの時代の、終わりの始まりとなるでしょう。ボイコット、経済制裁、反撃などがやがて効果をあらわすでしょう。アメリカは、軍事力で制圧されることはないかも知れません。しかし、例えば、オペックが石油の価格をドルではなくユーロではかることに決定すれば、ドルの価値は一夜にして40%も下がることになります。いずれにしても、ユーロはその範囲をひろげていますし、現在すでに、全体の規模でアメリカ市場を超えています。アメリカ経済は顕著な消費のみに頼っていますから、次第にヨーロッパや、インド、中国といった国々に取って代わられるでしょう。この経済上の絞め殺しは、不可避であり、アメリカという戦争用機械を鎮める唯一の方法ではないでしょうか。もちろん、それには多くの市民運動が不可欠ですし、この不法な戦争犯罪に反対する活動の必要性、また、このシステムによってもたらされた悲劇を軽く見るつもりもありません。多分、ただこの悪夢が終わってほしいと望む人間の、希望的観測に過ぎないのかも知れない。しかし、心の奥の片隅で、悪はいずれ敗北するという静かな確信を持つ

© 2003 Daniel Patrick Welch. 複製許可

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ダニエル・パトリック・ウェルチ

妻ジュリア・ナンバリワ‐ルグデと、アメリカ合衆国マサチューセッツ州セーラム在住。二人で「グリーンハウス・スクール」を運営。ラジオ出演、コラムのラジオ放送等でも活動中。過去の記事はオンラインで閲覧可。一部のコラムは、スペイン語やフランス語でも入手可能。リストをご希望の方はお知らせください。ラジオトークの再放送に関心のある方も、著者にご連絡ください。また、フランス語、ドイツ語、ロシア語、スペイン語に堪能のため、これらの言語でのインタヴューや録音も可能。詳しくは、danielpwelch.com をご覧ください。

Daniel P. Welch
Administrative Director
The Greenhouse School

"To learn more about our school please visit our listing at:
www.volunteersolutions.org/volunteer/agency/one_157700.html"